【EDIEEE×京丹後】地域外プレイヤーとの交流で地元プレイヤーの視座を変える機会を共創
– 丹後ビジネスコラボ Case 03 –
後リビングラボが市内の事業者やプレイヤー、行政等と協働してテレワーク・ワーケーションプログラムを展開することで生まれた、「市外事業者×京丹後」の共創事例をご紹介する記事シリーズ。第3回はEDIEEE合同会社さんと共に生み出した、「地元丹後のプレイヤーたちに新たな視点や気づきをもたらす機会創出」の事例です。
WHY京丹後?|課題感よりも「バイブス」のつながりから始める
丹後に住む人なら、この地域の豊かさを実感しない日はないでしょう。
群を抜いて恵まれた海と山の自然資本。それに支えられた農水産業や観光業、誇り高き伝統産業、地域に根ざした息の長い企業、その傍らで丹後の新しい時代を切り開く企業や団体、お店なども生まれています。人との温かいつながりもいまだ生きており、自然・経済・社会の全てがまずまず高いレベル。
しかし、アクセスの点では「東京から最も遠い」「陸の孤島」とも言われる場所だけに、気がつくと「丹後にどっぷり。しばらく丹後の外に出ていない」などという人が多くなってしまう傾向も否めません。そんな環境の中で、視野を狭めてしまわないようにするには、やはり地域外のプレイヤーとの交流機会は貴重です。
今回、共創ツアーを一緒に企画・運営したEDIEEEさんは、「何かが変わるきっかけとなる、小さなポジティブギャップを生み続ける」をミッションに、全国各地で企業や自治体、地域の人々と共に、多様な事業やプロジェクトをつくり出している会社です。
2023年9月のお彼岸の頃に開催したEDIEEEさんとの共創ツアーでは、共同代表の高山道亘さんの人脈から、遠くは北海道、近くは関西圏でまちづくりなどの活動を行なっているローカルプレイヤー6名が丹後に集結。2泊3日で丹後の恵みを楽しみながら、地元プレイヤーたちと交流しました。
高山みちのぶさん(左)/EDIEEE合同会社CEO。大阪生まれ。北海道大学、韓国ソウル大学校でデータサイエンスを専攻し、大手総合制作事業会社にて事業ブランディングやコンテンツ制作に関わる。外資系IT企業での事業立ち上げや、復興支援プロジェクトの推進を経て、2017年にプラットフォームビジネスで起業。2023年2月にEDIEEEを設立。
森本健太さん(右)/EDIEEE合同会社COO。東京生まれ。大学時代にまちおこしに触れ、住宅建材専門商社、NPOを経て2017年、独立と同時に鹿児島県に移住しまちづくりや観光のプロジェクトに従事。現在はバックオフィス業務を中心にプロジェクトマネジメントに従事、EDIEEEではローカル起点のプロジェクトの後方支援を担当。
HOW京丹後?|共創その①「丹後のディープにグッドなバイブス 〜丹後のLocalなWISDOMとVIBESに触れる3日間」ツアーを開催!
今回のツアー参加者を呼び集める際にEDIEEEさんが大事にしたのが、「地域で何かしらの活動やプロジェクトを行なっている方」、そして「グッドなバイブスを醸し出している方」という要件です。
「VIBES(バイブス)」とは「言葉によらず伝わってくる雰囲気、ノリ、気分、フィーリング」を意味しますが、EDIEEEさんがバイブスを軸に人を集めたのはなぜなのでしょうか? 何かもっと具体的な課題感やテーマ性があった方が、ツアー目的が明確になるのでは?
「僕たちはプロジェクトマネジメントを事業の中心に置いていますが、隅々まで設計され尽くしたプロジェクトでは、想定通りのことは起こるけれども、想定を超える面白い展開は生まれにくいということを、これまでの経験から感じてきました。地域を“自分事化”していくには、その地域でいかに思ってもみなかったことを発見し、それを面白がっていけるかが重要だと考えています。これが“ポジティブギャップ”と呼んでいるもので、そこに探究や創造のエネルギーが生まれる。それを生み出すために、“不確定性”をあえて含んだツアーにする必要があるのです。
一方で、根底の所での参加者の共通意識として、“何かしら地域をもっと楽しい場所にしたい、地域でもっと楽しみたい”という方向性を持っていることも重要です。その意識や、一緒に心地よく過ごし対話も深まりそうな雰囲気と活動領域を持った方を集めました」とEDIEEEさん。「バイブス」にはこうした背景や狙いも隠されていたのですね。
より多くのポジティブギャップを生むために、参加者には丹後の事前情報もほとんど伝えなかったそうです。確かに「丹後の社会課題の解決を考えるツアー」のように、課題感を起点に組み立てるツアーもあるかもしれませんが、その時点で社会課題に関係すること以外にはアンテナが立たなくなってしまうかもしれませんし、課題解決のメガネ越しにか丹後を見ることができなくなってしまうかもしれません。課題解決の先にある「面白さやワクワク」といった、予期せぬイノベーションの芽が生まれにくくなる可能性もありそうです。
「バイブスでつながっている人間関係なら、細かく説明しなくても来てくれるんですよ。あいつが誘うツアーなら面白そうだ、面白い人がいるに違いないって。僕らは地域おこしの成功例を視察するようなツアーやノウハウを教わる場をつくりたいわけではなく、地域の人と外から来る人がお互いに刺激を受けて影響し合えるような、オープンな学びの機会をつくりたいのです」
そんな背景からつくり出された今回のツアーは、丹後のグッドバイブスなお店や施設、フィールドを体験していただきながら、サウナを利用した参加者同士の交流タイムや、ワーケーション施設での丹後の事業者・自治体職員らとのワークショップを挟み、各人が自由に丹後を感じる時間なども取り入れた内容となりました。
【ツアー 2泊3日スケジュール概要】
●1日目
12:30 宮津駅集合
13:00 TANGOYA BREWERY & PUBLIC HOUSE
ランチ(HATAYA特製スパイスカレー)
株式会社ローカルフラッグ 若き事業者の思いを紹介
14:30 ATARIYA Tango Innovation Hub
16:00 蒸-五箇サウナ- アウトドアサウナ
19:00 あみけん 夕食&交流会
●2日目
6:00 ぬかとゆげ 朝サウナ
午前中 自由時間
13:30 かぶと山虹の家 ワークショップ
参加者それぞれが取り組むまちづくりについての意見交換
15:30 バーベキューガーデン無人島 船で無人島へ渡り島長と対話
16:30 無人島を探索
19:00 地元食材でBBQ
21:30 自由時間、焚き火を囲んで交流
宿泊:バーベキューガーデン無人島
●3日目
7:30 バーベキューガーデン無人島にて朝サウナ
8:30 朝食
9:30 自由時間
10:30 丹後エクスペリエンス 海の京都から環境を見つめる
12:30 ランチ (Organic Cafe てんとうむしばたけ)
13:30 LINKU ふり返りセッション
HOW京丹後?|共創その② 地域内外のプレイヤーが交流することで生まれたもの
ツアー参加者である全国各地の地域プレイヤーたちと、事業者や自治体職員を含む丹後のプレイヤーたちが交流したこの3日間の中で、何が生まれたのでしょうか。
丹後外から参加したみなさんからは、こんな声が聞かれました。
「みんな初対面だったにも関わらず、それぞれの人生について、自分をさらけ出して語り合うことができました。そんな対話を通じて改めて自分自身の人生や事業について考え直すきっかけにもなりました」
「丹後には地域のハブとなる場所やお試し住宅制度、シェアハウスなど、若い世代や移住者にとっても親近感や安心感を感じられる仕組みがあると感じました」
また、ワークショップなどを通じて、地元丹後のプレイヤーには日頃の眼差しを刷新させてもらえるような刺激があったと、ツアーをアテンドした丹後リビングラボの長瀬は感じたようです。
「他の地域の方々とのワークショップやツアー中の対話を通じて、丹後の中で自分たちがやっているビジネスや活動を俯瞰して見ることや、少し先の未来を考えてみることができたと思います。ローカルプレイヤーといえども、皆さん自分のいる地域よりも、もう少し広い視野を持って活動していらっしゃると感じました。地域で成果を上げていくための成功ノウハウではなく、経営者として地域で生業をつくっていくにあたっての“在り方”や“何が大事なのか”ということを、このツアーで一緒に過ごしたメンバーのリフレクションやフィードバックから学ぶことができたように思います」
EDIEEEさんは、隅々まであえてデザインし切らずに行ったこのツアーを終えて、こう語っています。
「ワークショップも、参加者がその時テーマとして持っていたものをお題とし、フリーハンドでデザインしました。チェックインして“今どんなことが起きていますか?”と投げかけ、出てきたテーマを2つに分けて、皆さんに好きな方のグループに入ってもらった。予定調和のお題ではないからこそ当事者意識で臨めるし、たまたまそこに居合わせた人同士だからよりフラットな関係で話ができます。こういうことが“本当の伴走”ではないかと思っています」
先入観なしに、参加者それぞれが丸裸で体感したことに価値がある、とEDIEEEさん。そのポジティブギャップから始まる、次なる展開が楽しみです。
WHAT京丹後?|今後の共創の可能性
このツアーを経て、参加者の一人である高嶋大介さんが行っている活動「100人カイギ」(街で働く100人を起点に人と人とをゆるやかにつなぎ、都市のあり方や価値の再発見を目的とするコミュニティ)を丹後でもやってみようかという話が持ち上がったり、丹後の各プレイヤーが立ち上げるさまざまなプロジェクトを多面的に調整しながらゴールまで導く、地域におけるプロジェクトマネジメント人材の育成講座のアイデアも生まれています。
全国各地で地域を見てきたEDIEEさんのこんな言葉が印象的でした。
「地域の課題ばかりに目が行きがちですが、それは活動の結果、意味づけられればいいこと。それよりも地域に関わる人たちが、自分自身でハンドルを握っているという前向きなエネルギーが大事。日本全国そこら中で課題だらけな感じが否めない中で、例えば丹後バルの関さんが、丹後の食材が大好きだから、それが結果的に食育につながっているように、“好き!”から動いていくエネルギーがとても重要だと思います」
自分自身の好奇心や感性で “面白い”を見つけ、“好き”から始まる活動で丹後を自分事にしていただく。丹後リビングラボでは、そんなポジティブギャップをたくさん生み出すツアーや機会を、今後もEDIEEEさんと一緒にプロデュースしていきたいと思います!
Writer & Editor|森田 マイコ企業でのマーケティングや広報の経験を生かした、人を動かす記事づくりが信条。多くの地域や分野を横断しながら、社会がどこに向かっていくのか探究中。趣味は旅。