2022.3.1

京丹後市テレワーク・ワーケーション受入れ研修会

2022年2月24日、道の駅丹後王国「食のみやこ」情報交流センターで京丹後市テレワーク・ワーケーション受入れ研修会を開催しました。

【主催】
丹後リビングラボ:一般社団法人Tangonian・株式会社インフォバーン・株式会社丹後王国ブルワリー
(京丹後市自然あふれるビジネスモデル事業)

この研修会では、地域の様々な事業者や行政の方々にご参加していただき、都市部企業のテレワーク・ワーケーションニーズが高まるなかでテレワークプランを創設するにあたり、他地域の取り組み事例やテレワーク実施企業のコンテンツ作りなどを学んでいただいた上で、自らの事業をブラッシュアップしていただきました。

目次

  1. 1.ワーケーションを進めるうえで必要なコト
  2. ▶釜石市が現在行っているワーケーションプログラム
  3. →生業の紹介
  4. →震災の経験を活かして…
  5. →その他”釜石市ならでは”のコンテンツ
  6. ▶ワーケーションオフィス
  7. ▶釜石市が目指す観光
  8. →釜石市の持続可能な観光事例
  9. 2.リモートワーク・ワ―ケーション導入企業から見た「行きたい町・行きたくない町」
  10. ▶株式会社旅武者について

すべて表示

1.ワーケーションを進めるうえで必要なコト

画像

第一部は、株式会社かまいしDMC代表取締役の河東英宣さんに、釜石市で取り組んでいるワーケーションのコンテンツや地域外からの人材誘客の方法などについてお伺いしました。

【講師】株式会社かまいしDMC 代表取締役 河東英宣 氏

画像2
OPEN FIELD MUSEUM KAMAISHI専属学芸員。出版社を経て2017年(株)パソナグループ入社。New Value Creation Fund投資政策委員会事務局にて地方創生事業に取り組むなかで、2018年4月(株)かまいしDMC設立に出資参加。同社設立3年を経て、釜石市に対し同社への出資金全額を返還。自立自走型DMOを実践し、第13回観光庁長官表彰を受賞。現在、観光庁事業「ワーケーション等の『新たな旅のスタイル』」40地域に選出され、企業単位での受入れを釜石市で行っている。

***

初めに3つのテーマに沿って参加者同士でディスカッションをしていただきました。
【テーマ1】SWOT分析
【テーマ2】かまいしDMCがワ―ケーションのターゲットを企業に絞ったのは何故か?
【テーマ3】釜石市はワ―ケーションでどのような町を目指すべきか?

画像
画像

テーマ1のSWOT分析では、釜石市のワ―ケーション事例を読み、「Strengths・Opportunity・Weaknesses・Threats」の4項目に分けてもらうワークショップを行いました。

スクリーンショット 2022-02-24 142245

SWOT分析ワークショップの最後に講師の河東さんから、釜石市のWeaknesses(弱点)やThreats(脅威)として挙げられたポイントに対して、プラスに捉え解決していくための提案がされました。

Weaknesses(弱点):首都圏からの距離、特別感、観光人材が少ない、リゾート施設が少ない ⇒市民を巻き込んだ魅力あるプログラム作り
Threats(脅威):移動が制限される ⇒オンライン開催も視野に入れる

▶釜石市が現在行っているワーケーションプログラム

スクリーンショット 2022-03-09 152648

グループディスカッションの後は、釜石市が実施しているワーケーションプログラムや目指している観光形態について共有していただきました。

釜石市は娯楽施設などがある保養地ではありませんが、そんな釜石市ならではの、ここでしかできない「体験」や「学び」をテーマにワーケーションプログラムを提供されています。
また様々なワーケーションプログラムを通して、関係人口を増やすための工夫もされています。

→生業の紹介

〔山林の観光活用〕

画像7
森を散策しつつ、「林業」「森林管理」「森林関連ビジネス」について学びながら、実際に釜石の里山整備を体感していただけるプログラム

〔漁業×観光〕

画像6
季節ごとの漁業体験、食する体験まで行う

→震災の経験を活かして…

スクリーンショット 2022-03-14 095655

〔リスクに強い組織作り〕防災学習の観点から
〔復興建築巡り〕設計・建築関係向けとして、公営住宅や公共施設など東日本大震災からの復興の軌跡をたどるコンテンツ

→その他”釜石市ならでは”のコンテンツ

三陸鉄道乗車
漁船クルーズ
SUP&シーカヤック:定置網漁の見学をSUPによって行う
かまいしDMCが進める観光まちづくり
ラグビー体験、復興スタジアム視察

▶ワーケーションオフィス

スクリーンショット 2022-03-14 095409

Connect to~Work・Play・Learningをコンセプトに、ワ―ケーションオフィス「Nemaru-Port(ねまるポート)」を新設。
この施設のネーミングにも使われている「ねまる」は、岩手の方言で「座ったり」、「家に寄る」ことを意味しており、気軽に立ち寄れ、雄大な自然と共生する釜石市の地域の人々と触れ合いながら、自分らしさを見つめ直し新たなパワーを生み出すことができるスペースを目指されています。
また、この施設にはジェラート工房が併設しており、従業員が施設の受付なども同時に担当するなど、人材不足という課題面にも柔軟に対応し工夫されています。

▶釜石市が目指す観光

釜石市は、「屋根のない博物館」Open Field Museum KAMAISHIというコンセプトのもとに、地域の暮らしや自然に直接触れ体験してもらえる観光を目指しています。

また2019年には「世界の持続可能な観光地100選」に選ばれ、その後も4年連続で選出されています。
講義の中では、その事例や取組について学ばせていただきました。

→釜石市の持続可能な観光事例

・漁船クルーズ

画像5

遊覧船を新調するのではなく、午前中に漁を終えた漁船を利用することで無駄がなく費用も抑えています
また漁師の方々にガイドもしていただくことによって、彼らにとっても副収入を得られるだけではなく、普段気付きにくい地元の魅力を再発見したり、生き甲斐になることにもつながるといった利点があります。

・ジオ弁当

2釜石ジオ弁当3

ツアー参加者に提供するお弁当の食材を “地産地消”にこだわることで、地元の食材を知っていただけるだけでなく、地域で経済が循環する仕組みを作ることが出来る

・イルミネーション
地域の飲食店で出た廃油を利用したイルミネーション

2.リモートワーク・ワ―ケーション導入企業から見た「行きたい町・行きたくない町」

第2部は、株式会社旅武者 代表取締役の遠藤 まさみさんより、テレワーク・ワーケーションの導入企業側から、実際に全国の自治体や地方にてテレワーク・ワーケーションを従業員が行った経験をもとに、テレワーク・ワーケーションに参加する側としてのご意見やポイントなどをお聞きしました。

【講師】株式会社旅武者 代表取締役 遠藤 まさみ氏

画像10
大手メーカー、専門商社を経て2001年より大手コンサルティング会社に転職。前職の経験を活かし、マネージャーとして、メーカー・財閥系商社・電力会社、ゴルフ業界最大手企業など、数十名〜数百名規模の国内・海外プロジェクトに携わる傍ら、新卒・中途採用面談や社内教育など、幅広く活躍。2013年に20代から目標としていたアーリーリタイアを実現し、夫と共に世界遺産を巡る海外放浪の旅へ。滞在中のベトナムにて代表・故 山口と意気投合し、『武者修行®プログラム』に参画。2020年10月に株式会社旅武者の代表取締役就任

***

▶株式会社旅武者について

→代表遠藤さんの旅するように生きる働き方

画像

代表の遠藤さん自身、リモートでお仕事をしながら日本一周や世界一周をされていたという経歴をお持ちです。
そんな経験が、現在旅武者が社員に対して導入しているフレキシブルな働き方や、事業を創り出しているということをお話を聞いていて実感しました。

→事業概要

株式会社旅武者は主に3つの柱をもとに人材育成に取り組んまれています。

画像

◎人材開発
自己変革していく力を養う様々なプログラム・研修を実施。これらの研修を通じて、主体的に状況を切り拓く力(自走式エンジン)を積んだ人材を育成することをミッションに掲げています。
◎ファシリテーター
ビジネス企画やチームビルディングのプロなど、他分野のファシリテーターが研修生をサポートする体制があります。
◎コミュニティ
研修の修了生で構成されるコミュニティ「BASE」
社会人になっても様々なシーンでお互いに支え合える心の拠り所でもあります。

→研修プログラム

続いて、現在旅武者が行っている「武者修行プログラム」についてご紹介していただきました。

◎「ビジネス」と「自己成長」に挑む2週間のプログラム

画像

全国から集まる大学生がビジネスプランを企画し、実際に顧客に提供・販売。その結果をもとに最終プレゼンで発表するというプログラムです。
期間中は、現役の経営者であるビジネスファシリテーターやチームビルディングファシリテーターからアドバイスをいただくことができるなど、単なるアイデアプレゼンの場ではなく、2週間という限られた期間の中、本物のビジネス創造スキルを体得してもらうための内容になっています。

他にも、「企業向けビジネス研修」、「就活・就職支援」、「経営戦略コンサルティング」なども行っています。

◎地方創生イノベーション武者修行プログラム

画像

自治体や地方創生に携わる企業と共に展開する「地方創生イノベーション武者修行プログラム」では、①LOCATION(自然・歴史・文化・産業 地域で異なるビジネスや課題)②RELATION(地域の願いと人の想い 地元の方との関係づくり)③EXECUTION(地域の期待を超える 革新的なビジネスを提案)という3つのポイントの中で、地域課題から新たなビジネスアイデアを提案するプログラムを全国各地で実施しています。

▶リモートワークに向けた取り組み

→リモートワーク制度の導入にはBPRが鍵

リモートワーク制度だけを導入しても、現行の環境や制度上の矛盾など運用とのアンマッチングが起こりやすいため、会社の制度自体を見直すBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)が重要だといいます。

画像

環境整備 
・システムのクラウド化・電子化
・定例会議のセットアップ
制度改革
・評価制度の見直し
・就労規則
・福利厚生
■文化浸透
・ミッション・ビジョン・バリューの浸透

▶旅武者が考える “ワ―ケーション”とは

初めに遠藤さんから、ワ―ケーションに対して世間でどのようなイメージがあるかについて、実際にワ―ケーションと検索して出てくる画像をもとにその現状を共有していただきました。

画像

この検索結果からも、「ワ―ケーション」の一般的な世間の認識として、仕事と休暇の線引きが曖昧なのが分かります。
ワ―ケーションを導入する企業が少ないのもそこに対する懸念が大きいのではないかと感じました。

画像

一般社団法人日本ワ―ケーション協会によると、ワ―ケーションには7つのタイプがあります。
現在「休暇活用型」というイメージが大きいですが、遠藤さんはワ―ケーションにおいて重要なのは、仕事とバケーションのメリハリで、それに伴い切り替えが短時間でできる働き方が求められると考えます。

▶アンケート

実際にワ―ケーションやリモートワークを行った方のアンケート結果をもとに、受け入れ先にどのようなことが求められるのかについて共有していただきました。

→ワ―ケーション

■ワーク環境
・Wi-Fiを完備しているホテルは多いが、業種によってはWi-Fiのスピードも非常に重要であるため、Wi-Fiの速度を数字で明示してほしい
・ホテルにある椅子は大抵仕事に向いていない。長時間作業をしても疲れない椅子が必要
■バケーション環境
・ホテルの周辺で休憩時間や昼休みなどを利用して気軽に気分転換できる所があると嬉しい
温泉がすぐに入れる距離にあると良いリフレッシュになる

→リモートワーク

ADDress日本各地で運営する家に定額で住めるサービス)を利用してリモートワークを行った方の例
■ワーク環境
・首都圏近郊の利便性の良い場所が選べる
・家が綺麗
■リモートワークに感じる価値
・コロナ禍では難しい人との新たな出逢いがある

▶行きたい町、行きたくない町

→ワークショップ

これまでの講義を受けて、京丹後市を例において、①京丹後市や自分自身に足りないこと?活かせるところ?②今後、こんなことをしたい!という2つの問いに対して参加者の方々に考えてもらうワークショップを行いました。
また、今回行政の方々にもご参加いただいていたため、参加事業者からは行政へ向けての要望などもされていました。

画像
画像

【Tabel1】
・各宿泊施設でワーケーションのためにどのようなWi-Fi環境が整っているかをマークなどで見える化する
・地域の協力をもっと強くしたい
【Tabel2】
・ワ―ケーションを検証する制度を整える必要があるのでは
・丹後リビングラボを中心に市に対しての要望などもどんどん投げかけてほしい
・京丹後市でも地域通貨的な取り組みをしたい
【Tabel3】
・釜石市と京丹後市の観光コンテンツが類似していたため、京丹後市での観光コンテンツを造成する上でも参考になった
【Tabel4】
・宿泊施設に対してワーケーション環境を整えるための補助金が欲しい
・自転車の乗り捨てができるようにしてほしい

→遠藤さんが考える「行きたい町、行きたくない町」

最後に遠藤さんより、ご自身も旅をしながら働いてきた実体験や、全国で実施してきた旅武者のプログラムなどを通して、「行きたい町、行きたくない町」とはどんな町か?を共有していただきました。

画像

行きたい町の特徴として、以下の3つの点が重要になるとおっしゃられていました。

1.まちの人と「つなぐ」ことができる
→関係人口の創出につながる。特に学生が積極的に介入していけることが大切。
2.行政のフットワークが軽い
3.最低限の利便性(コンビニ・病院)

***

最後に今回の研修会を通して、改めて京丹後市でテレワーク・ワーケーションを推進する中で、地域のつながりが重要だという事を実感しました。
コンソーシアムへの参加が増えれば増えるほど地域の繋がりも強化され、実現できることも増えるのではないかと思います。

今後も丹後リビングラボに参画していただける事業者の方々がさらに増え、より地域のつながりが強くなることを期待しています!