2023.9.14

究極のサ旅とは?みんなで作る、サウナツーリズムの最適解。

突然ですが、あなたはサウナ旅(通称サ旅)と聞いて、どのような旅を思い浮かべますか?薪をくべる極上のサウナと、都会では体験できない水質抜群の水風呂、息を飲むような絶景を見渡す外気浴。人それぞれ、ライフスタイルに合った、様々なサウナ旅の形があるでしょう。

それなのについ、1日の予定にサウナ施設を何か所も詰め込んでしまい、実は「1つの施設にもっと長く滞在したかった…」とあとから後悔してしまったことは、サウナ目的で旅をしたことがある方であれば、一度はあったかもしれません。初めて訪れる土地の観光もままならぬまま、もしかしたら出逢えたかもしれない未だ見ぬ風景や人、思い出までを見過ごしてしまったかもしれません。

そもそもサウナ旅の最適解とは、何でしょうか。旅の形は人それぞれ、自由であると割り切ることもできますが、サウナファンであれば一度は耳にしたことがある「ととのう」という有名なルーティン。もしかしたらサウナ旅にも「ととのう」のような最適解が、自由という前提の名の下に潜んでいるのではないでしょうか。

そこで私達は「究極のサウナ旅とは?」をお題に、サウナツーリズムの在り方を考え、巡る旅を企画しました。従来あった旅の常識を捉え直す過程とともに、現地レポートをお届けします。

サウナツアーなのにサウナが出てこないという事態

野村克也と丹後ちりめんを生んだ町、京都府京丹後市。この街を舞台として、サウナ旅を始めていきます。京丹後と聞いて、どこ?と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、京という響きから、神社仏閣や舞妓、そして京都ならではの銭湯文化を思い浮かべたかもしれません。

しかし初めて京丹後を訪れてみると、京都らしさをこれっぽっちも感じないことに驚くはずです。お隣の宮津市と違い、日本三景と称される「天橋立」のような際立つ名所もない。一見何もなさそうなこの街に、一体何があるというのか。いざ訪れてみて、僭越ながら頭を抱えそうになります。

参加者控室に書かれた「丹後半島サウナツアー様」の文字。サウナツアーと謳うものの、全国に名が知られているようなサウナ施設はかの地には少なく、果たしてどのような旅程が組まれているのか見当もつきません。いくばくか戸惑いを隠せない、参加者の反応がこちらからも見て取れました。

ツアー初日、まず初めに訪れたのは「てんとうむしばたけビオ・ラビッツ株式会社」。京丹後で有機農業のパイオニアとして名が知られている野菜畑です。野菜ということは、サウナ飯(サウナ後に食べるご飯)として頂く食材を予め収穫するということなのでしょうか?

そして唐突に始まったのは、野菜を育てる「土」に関する説明。てんとうむしばたけさんでは土から見直して野菜を育む取り組みを行っており、わずか数グラムの土には数千億匹の微生物が生息しているとのことです。土の壮大なスケールに圧倒されましたが、この時点ではサウナとの繋がりが見出せません。

土の説明を受けたあと、野菜畑での収穫体験に参加します。半信半疑ながらも収穫に勤しむ参加者一同。季節によって収穫できる野菜が異なるそうですが、この日収穫できたのは「ベビーコーン」と「万願寺唐辛子」。夕方の企画で、こちらで収穫した野菜を使うという説明を受けました。

そして「Organic Cafe てんとうむしばたけ」へと移り、季節野菜がふんだんに使われたランチメニューをいただきます。サウナには入らずじまいのため、サウナ飯としてのランチとはなりませんでしたが、普段食することが少ない季節野菜の素材の良さに舌鼓を打ちました。

Organic Cafe てんとうむしばたけは自然溢れる環境下にあり、まるで北欧の風景を彷彿とさせるような森に囲まれたロケーションが印象的でした。若い方の来訪が目立ち、お昼時には満席に。京丹後においても人気を博していることが伺えます。しかし、お待ちかねのサウナはまだ登場しません。

続いて訪れたのは「浅茂川漁港」。こちらで海釣りの体験ができるということでお邪魔をしました。京丹後と言えば「海の京都」と称されるほど風光明媚な海が特徴的なのですが、この日は生憎の小雨模様。参加者は雨合羽などを羽織りながら、海の京都での魚釣り体験へと臨みます。

漁港の方のご厚意で、釣り具に必要なルアーや餌のセッティングなどは予め用意がありました。そして釣り糸を水面に吊るしてみると、ものの数分もしないうちに数多くの魚が釣り上げられます。この日の午後は「アジ」や「サバ」など、日常においても身近な魚に出逢うことができました。

参加者が海釣りに勤しんでいる頃、「マグロ」が近くの漁船業者から釣り上げられ、参加者一同が驚きの声を発します。生まれてこの方目にしたことのないような、ヒトの身長に達しようかという巨大なマグロ。さすがは海の京都、普段体験することのない自然の壮大な恵みに圧倒されます。

しかしながら本来、参加者が参加しているのは「丹後半島サウナツアー」。未だサウナが出てこない点だけが不可解でしたが、参加者の中には海釣りが初めてという方もおり、初心者でも数分で魚を釣ることができることに喜んでいました。釣れた魚は野菜と同じく、夕方の企画で使われるようです。

日が暮れてようやく訪れたサウナの機運

続いて訪れたのは「琴引の塩工場」。海の京都・京丹後には鳴き砂で有名な琴引浜を有し、琴引浜の綺麗な海水から、100%天然無添加のミネラル塩を採取する工場があります。京丹後は前述のように京都らしさは感じづらいものの、海はもちろんのこと、森や山も有するという自然大国なのです。

こちらではMy塩作り体験ができるそうで、体験ではコンロと鍋で塩を作るのですが、本来の琴引の塩は、塩作り専用の大きな窯を使って製造が行われます。まるでサウナを彷彿とさせるような薪くべと蒸気を見た参加者からは「サウナじゃん!」という声もあり、いよいよサウナへの渇望が隠せない様子…

しかし、確かに言われてみると、塩と聞くとサウナと馴染みが深いのかもしれません。例えば温浴施設には「塩サウナ」なるものが存在しますし、そして前述したサウナ飯においても、とりわけ塩気が含まれる食材や調味料等がサウナファンから好まれる傾向にあります。

こちらで自作したMy塩も夕方の企画で使われる予定ですが、サウナとの親和性が高いと知るや、俄然塩作りに勤しむ参加者たち。白濁色の水溶液の状態から塩を熱し、スプーンでただひたすらかき混ぜていくことで小さな粒子が現れ、写真のような細やかな塩が完成します。

琴引の塩はもちろん食用として使用可能で、サウナ入浴後の口に合う「琴引の塩サイダー」や「京丹後塩ぷりん」などのお土産品にも使われています。特に参加者が絶賛していたのは京丹後塩ぷりんで、サウナ後のデザートとして塩ぷりんが合うということで購入されていた方もいらっしゃいました。

そして日が暮れようとしていた頃、ついに一同はサウナのあるところまで辿り着きます。2022年11月にオープンしたばかりの「蒸(むす)五箇サウナ」。京丹後の五箇集落で使われなくなった伝統的な古民家を改修し、サウナを通じて地元客が集うコミュニティ施設へと生まれ変わりました。

「やっとサウナに入れる!」午前中から夕方まで、まるで絶食明けであるかのように、サウナのお預けを食らってしまった参加者からは歓喜と安堵の声が止まりません。日本国内でも珍しい、茅葺屋根が特徴的な古民家サウナ体験を思うと、不思議と胸が高鳴ります。

「蒸」と書かれた暖簾をくぐると、サウナ室への導線がさっそく現れます。頭上にはフィンランドの伝統的な「SAUNA」を表現したアートが。こちらを運営するスタッフは、フィンランドでのサウナ視察旅から先日帰国されたばかりで、サウナへの並々ならぬこだわりが伝わってくるようでした。

気になる蒸(むす)のサウナ室はこちら。サウナ室の壁面は、京都の伝統的なお寺のお堂にも使われていた弁柄と柿渋の自然塗料が使われており、焼き色加工を施した竹の背もたれが印象的で、自然光を主とした照明環境も素晴らしい。フィンランドにも誇ることができる、ザ・ジャパニーズサウナです。

そしてサウナを体験する前に手渡されたのが、まっさらな「サウナハット」。印字もカラーリングもない見慣れぬハットに戸惑いを隠せませんが、こちらのハットは2日目のプログラムで使用するため、今日のサウナで予め馴らしてくださいという指示がありました。これは一体…?

まるで映画のような伏線回収とハイライト

待ちに待ったサウナ室を前にして、はやる気持ちが抑えられないのか、それともサ旅に慣れているのか、上裸こそが正装であると言わんばかりに、身に着けているものを素早く脱ぎ去る参加者たち。まっさらなサウナハットを片手に、水着ひとつでサウナ室へと駆け込みます。

蒸(むす)のサウナ室は大人でもゆったり、胡坐をかくことができるほどのベンチを備えています。サウナ室には薪をくべるタイプのストーブがあり、時折スタッフが薪くべに訪れる以外は、川のせせらぎや鳥のさえずりなどの自然音に身を委ね、旅の疲れを癒すことができます。

そしてサウナファンには欠かせない水風呂。古民家のすぐ横を流れる清流に着水することができ、サウナ室で火照った身体をクールダウンすることができます。水深は浅く、荒天時以外は穏やかな清流であるため、スタッフによる監視のもと、安全な環境で天然の水風呂を堪能することができます。

清流から上がったあとは、サウナファンにはすっかりお馴染みのインフィニティチェアで外気浴。都会の喧騒から離れ、自然溢れる環境に身を委ねて、日常の数多あるストレスから解き放たれていきます。この体験こそ、地方サ旅の醍醐味と言っても差し支えないでしょう。

しかしただサウナを楽しむことだけが、ツアーのすべてではありません。ここからがサウナツアーの本領発揮、日中に体験してきたこと全てが、伏線となって回収されていきます。サウナ室の前に突如現れた謎の土。こちらを塗ってサウナに入るように誘導されます。

全身土まみれになってサウナに入る参加者たち。詳しく説明すると、こちらは土ではなく米ぬかで作られた「ぬかパック」。わずか数グラムのぬかには数十億匹の微生物が生息しており… あれ、このくだりってひょっとして、てんとうむしばたけでお話があった土の説明に似ているかも?

ぬかに生息する数十億匹の微生物たちが分泌するもの、それらが熱となって身体を温め、深部体温が向上し、そしてお肌にとてつもない美容効果をもたらすのです。見た目はグロテスクですが、サウナとの相性は抜群。農場での学びと、サウナでの体験がビビビと繋がった瞬間でした。

ぬかパック後に清流へ入っても、なぜか不思議と身体が冷えない。外気浴中も時折吹く風が冷たく感じないし、何よりお肌がぷるぷるで最高!ぬかパックによる最高体験を得るために、日中の学びの時間があったということに気づく参加者たち。彼らの膝を叩く音が、後を耐えませんでした。

ぬかパック以外にも、まだまだ止まらぬ伏線回収。前述のてんとうむしばたけで収穫した「ベビーコーン」と「万願寺唐辛子」を、蒸(むす)の囲炉裏スペースで豪快に焼いていきます。参加者たちから特に反響があったのが、万願寺唐辛子と「琴引の塩」の合わせ技でした。

My塩作り体験でこしらえた琴引の塩が究極の調味料となり、シンプルイズベストなサウナ飯が完成。伏線回収の流れはとどまることを知らず、浅茂川漁港で釣り上げた「アジ」などを焼いたり、てんぷらとして頂いたり、琴引の塩をまぶせたりするなど、自然素材のマリアージュが続きます。

焼いた野菜や魚などを食しながら、体験の悦びを共有し合う参加者たち。蒸(むす)の囲炉裏はさながらフィンランドの体験そのもの。サウナ後、暖炉を囲みながら会話に興じるのがフィンランド流であり、かの国フィンランドのひとときに思いを馳せながら、団らんを楽しみました。

サウナ浴の合間に軽食を楽しむのも、蒸ならではの過ごし方。アルコール以外の何かを口にした後にサウナに入ってはいけないというルールはありませんし、小腹を満たしてからサウナ室に戻っても良いのです。味覚だけでなく五感を活性化し、サウナを通じて自然との交流を深めていきます。

旅の形は人それぞれ自由であると冒頭に記しましたが、サウナとの向き合い方は自由であり、「自然とともに、自然に過ごす」ということが初日の大いなる気付きでした。目に映る全てが伏線となり、まるで1本の映画作品を観終えたかのような彩りを、各人にもたらしてくれました。

サ旅二日目、早起きには”三十七”文の得あり

映画を観終えた後は得てして、作品の余韻が止まないもの。ひとたび作品にのめり込んでしまうと、なかなか気持ちが切り替わりません。映画の余韻を語り合うかのように、前日は夜更けまで語り込む参加者の姿が印象的で、できることなら夢から醒めないでくれと願わずにはいられません。

さらに、サ旅二日目は朝6時の集合。この日は京丹後を代表する新進気鋭の温浴施設「ぬかとゆげ」を半貸切で体験できるというプログラムを控えており、もしかしたら夢うつつのまま、集合時間に現れない参加者もいらっしゃるかも…という不安が頭をかすめました。

しかしながら、果たしてそのような不安は杞憂に終わります。誰一人欠くことなく、朝6時に全員集合。流石は歴戦のサ旅猛者たち、新しいサウナのためならたとえ夢からでも醒めるという勇ましさたるや、サウナの国フィンランドの人々でさえ恐れおののくことでしょう。

ぬかとゆげは、いわゆる健康ランドやスーパー銭湯のような一般的な温浴施設とは異なり、ホテル「KISSUIEN Stay & Food」の敷地内にある古民家を改修した施設です。したがってコンパクトな環境ながらも、利用者が最大限温浴を堪能できる仕掛けが大変充実しています。

さらに運営母体が医療施設であるため、予防医療を目的とした温浴体験が最大の特徴です。また京丹後独自の文化や伝統芸能の要素を随所を取り入れ、京丹後を代表する産業「丹後ちりめん」の織物を施設玄関に掲出するなど、地域に根差した活動を数多く推進されています。

このような文化や地域的背景を踏まえて、ぬかとゆげのそれぞれの特徴を詳細に説明してくださったのは、ぬかとゆげの施設マネージャーを務めておられるカジさん。聴く者を惹きつける不思議な魅力があるカジさんの施設説明には、参加者一同が熱心に耳を傾けていました。

ぬかとゆげには計5つの貸切サウナ室がありますが、温浴業界内でとりわけ話題となっているのは、国内随一のバリアフリー対応サウナである「JOKAINEN:(よかいねん)」。フィンランドのバリアフリーサウナ規定を参考にしながら建てられた社会的意義の高いサウナ室となっています。

こちらのサウナ、バリアフリーに適したサウナストーブを導入しているのですが、サウナ体験の観点でも一見の価値があります。一般的には天井からの対流熱で蒸されるストーブが主流ですが、こちらはなんと足元から温める独自技術を導入しており、フィンランド帰りのスタッフも絶賛する程。

「JOKAINEN:(よかいねん)こそが日本一だ」と一部の業界関係者が賞賛を送り、実際に体験した参加者もそのクオリティの高さに驚きを隠せませんでした。そして他にも、ぬかとゆげには4つのサウナ室があり、今回のサ旅ツアーでは計3つのサウナ室を体験することができました。

外気浴スペースにも一工夫が見られます。例えば「CHILL DIVE」とよばれるうつ伏せ型の特注ベンチで外気浴をしたり、京都のインテリア家具を製造する企業「ARIA」とのコラボレーションでチェアを制作したりと、ぬかのゆげのこだわりはとどまるところを知りません。

そしてぬかとゆげ最大のオリジナリティは、初日のぬかパックでも登場した「米ぬか酵素風呂」。前述したように、京丹後産の米ぬかには億単位の微生物が生息しており、生き物を扱うようにこだわり365日微生物を育てているという、とてつもない規模のサービスを提供しているのです。

ぬかに生息する微生物から発する熱は、入浴者の身体を深部体温から温め、全身から汗が噴き出すほど体感温度を高めます。そこでかいた汗もまた微生物たちの栄養分として吸収され、次なる温め体験へと繋がっていきます。これぞsDGS、微生物が織り成すサステナブルな循環モデル。

ぬか体験の感想を聞くと「この体験こそサ旅の最高潮」「これだけで今日一日が終わってしまったかのよう」という衝撃的な言葉を口にする参加者たち。6時から早起きをしなければ、このハイライトを迎えることはできなかったでしょう。早起きは三十七(サウナ)文の得になりましたね。

サ旅の思い出作りには “お土産” が欠かせない

初日の蒸(むす)、そして二日目のぬかとゆげ。最高峰のサウナを二ヵ所も体験できたことで、まさかの絶食状態から十二分にお腹が満たされたことでしょう。しかし最後に大事なものに忘れてはいないでしょうか。そう、 旅の定番と言えばなんといっても「お土産」は欠かせません。

そして訪れたのはお土産コーナー… ではなく「丹後ちりめん織元 たゆう」の工場。初日に手渡されたまっさらなサウナハット、実は丹後ちりめんと同じ絹糸から織られており、その製造過程を学ぶために工場を訪れたのでした。あのサウナハットにも、京丹後の特色が込められていたのです。

丹後ちりめん工場で稼働する織機は大変な迫力があり、ひとつひとつ目視することさえ困難な小さな絹糸を、目にも止まらぬ速さで成型していきます。「ガッチャン、ガッチャン」と動く織機はまるでビートを刻むようにリズミカルに音を発し、訪れる人々に中毒的な感覚さえもたらします。

しかしながら織機の真髄と言えば、そのプログラミングの細やかさにあります。オルゴールを想像するとわかりやすいかもしれませんが、写真のように穴が空いた合板を組み上げることで、はじめて丹後ちりめんの繊細なデザインが実現するのです。そして組み合わせる合板の数、実に数千枚以上…!

丹後ちりめんに必要な合板は数千枚… ぬかに生息する微生物の数は数十億匹… このサ旅では、まるで天文学的な数字と向き合うことが何故だか多いのですが、この世の中にあるものは全てが当たり前ではないというう気付きを得られただけでも、収穫多き旅であったかもしれません。

サウナハットをゼロから織り上げることは限られた時間の中で現実ではないという判断から、われわれ一般人はサウナハットに着色する過程から参加させて頂きました。サウナハットを作るワークショップは数あれど、旅先でサウナハットを作ることさえ、大変貴重な機会なのですから。

イエロー、ブルー、ピンク。3色の中から好みの色を選び、サウナハットに着色をすることができます。また、生地の一部を紐で括り上げることでサウナハットにお好みの模様をつけたり、大胆にもイエローとブルーを混ぜて異なる配色にしたりと、参加者独自のセンスを試みることもできました。

そして完成したオリジナルサウナハットがこちら。色鮮やかなブルーの配色に、紐で括り上げた生地の一部がワンポイントとなって、紋所の形を為した模様がハットに刻まれます。これほど独自性の高いサウナハットはなかなか珍しく、ハットの取り間違えはまず防げるのではないでしょうか。

イエローとブルーの着色を混ぜた、チャレンジャーによるサウナハット。結果、見事に色鮮やかな、ビビッドなグリーンに仕上がりました。誰もが満足する仕上がりで、唯一無二のオリジナルサウナハットを作ることができる体験設計に驚きを禁じえませんでした。

こちらの方は大胆にもセンターで配色を分け、右側は無色ホワイト、左側はイエローで着色するというお洒落な仕上がりに。そして丹後ちりめんのデザインが織り成す造形美により世界に一つのサウナハットが完成。またとないお土産と思い出こそが、その地域の文化を日常に宿すことになるのです。

なお、ぬかとゆげではサウナハットの体験のように「ひとつひとつのカラーが全て異なる」オリジナルカラーTシャツを販売中です。ただ販売するだけがお土産ではなく、思い出になるようなストーリーテリングとオリジナリティが大切。そんな気付きを得た、サ旅の締めくくりとなりました。

人と人とが出逢い、みんなで作るサ旅の最適解

楽しかったサ旅もこれまで。京丹後から車で1時間、「コウノトリ但馬空港」からそれぞれ帰路につきます。ゴウン、ゴウンと轟音を響かせ、空へと飛び立つプロペラ機。窓から見える京丹後の街並みが少しずつ小さくなるとともに、このサ旅で出逢った色んな出来事が思い出されていきます。

薪をくべる極上のサウナと、都会では体験できない水質抜群の水風呂、息を飲むような絶景を見渡す外気浴、涎が出そうになった絶品サウナ飯、ここでしか買えない地域限定のサウナみやげ、そのどれもがプライスレスな体験なのですが、しかしそれ以上に強く印象に残ることがあります。

それは「人との出逢い」です。例えば、皆さんがそのサウナ施設に足を運ぶ理由。サウナのスペックや施設としての充実度、アクセスの良さはもちろん大切ですが、皆さんがそのサウナ施設に足を運んでいるのは、実は会いたい人に会いに行くという目的もあるのではないでしょうか。

いま日本で過熱していると言われているサウナブーム。そのブームのきっかけについて「ドラマサ道を観て、サウナにはまった」と口にする人々がどれだけ多いことでしょうか。そのドラマサ道の中でとりわけ多くの人々の心を動かしたのは、他ならぬヒューマンドラマでした。

サウナに集う人々がそれぞれの立場や肩書きを脱ぎ、同じ姿で同じ空間を共にするということ。これこそがサウナにおける、最大の魅力の一つと言っても差し支えないのではないでしょうか。そしてサウナがあるからこそ、普段出逢えない人と出逢うことが出来るという機会が生まれます。

サウナがあるこそ、出逢えない人と出逢うことができる。この魅力をサ旅に当てはめてみると、普段旅をしていては決して出逢えない人たちと、サウナを通してなら出逢うことができる。これって、実はすごいことだと思いませんか。この旅には、そういった凄みが凝縮していました。

そしてこのサ旅にはもう一つ、凄いことがありました。それは参加する人みな、作る側になれるということ。サービスを利用すると「作る側」と「受ける側」の壁を感じることが時折あります。しかし、京丹後ではそれを感じることが少ない。むしろ積極的に作る側へと巻き込まれる機会の方が多いです。

温浴施設で働いている=作る側である、温浴施設を利用する=受ける側であるという前提が、このサ旅ではとことん覆されていきます。極めて近い距離感の中でお互いが好きなことについて話し、旅や地域のことについて話し、いつかはあなたも作る側となる可能性も、ゼロではないかもしれません。

これからのサ旅は、サウナのスペックが高いことはもちろんですが、いかに人と出逢い、いかに作る側として参加し、いかにみんなとの輪を作っていくか。そこに施設側かどうか、他の所属先かどうか、地方在住かどうかは問われません。その前提をほぐしてくれるのが、他ならぬ「サウナ」なのではないでしょうか。

「究極のサウナ旅とは?」をお題としてサウナツーリズムの在り方を考え、地方を巡るサ旅。私達はこれからも、サウナをきっかけとして人と人とが出逢い、みなさんで作るサ旅を企画していきます。これまで体験したことのないサ旅に出たくなった時、あなたとお会いできるのを楽しみにしています。

Writer: TAKAYAMA | サウナアンバサダー

サウナアンバサダー(フィンランド政府観光局認定)