【関電×TRAPOL×京丹後】
入社2年目社員の絆を強めながら、地域にもう一歩深く入る研修を共創!
丹後リビングラボが市内の事業者やプレイヤー、行政等と協働してテレワーク・ワーケーションプログラムを展開することで生まれた、「市外事業者×京丹後」の共創事例をご紹介する記事シリーズ。第5回は関西電力労働組合さんと、関西電力グループの社内ベンチャーTRAPOL合同会社さんと共に三者で共創した、「入社2年目社員の絆、および企業と地域の結びつきを強める組合員研修」の事例です。
WHY京丹後?|組合員研修離れをなんとかしたい。魅力を高めて参加したくなる企画に
関西電力株式会社といえば、私たちの生活を支える電力を供給している関西圏随一の電力会社。昨今の地球温暖化や生物多様性の損失などの社会課題に向き合い、国が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて、エネルギーの安定供給と脱炭素化にも取り組んでいます。地域貢献や地域の人と一緒に行うまちづくりにも力を入れており、大阪府の吹田市では再生可能エネルギーだけを使ったまちづくりの試みを行ったり、兵庫県の神戸市と連携して新しいモビリティの実証実験を展開したりもしています。
その労働組合では、組合員(関電社員)の労働条件や働きがいの改善を中心に活動を行っており、今回の入社2年目社員の組合員研修「ユニオンルーキーズセミナー3」もその活動の一つ。入社1年目に行う2回の基礎研修を経て、2年目に開催するこのセミナーでは、大規模な企業だけに日頃なかなか接する機会が少ない同期と一緒に1泊2日の旅へ出かけ、体験学習を通じたチームビルディングや人間関係の構築を促進することを目的としています。
ところが近年、組合員研修を主催する労働組合のメンバーにはこんな悩みが。
「最近は社員の価値観も多様化していて、こうした組合員研修への参加に抵抗がある人も増えており、出席率が低下している傾向です。ここで組織の上司が強制力を働かせるよりも、やはり組合員研修自体を若い世代が“行きたい!”と思える魅力的なものにしていかなくてはという課題感がありました。そこで、社内ベンチャーの旅行会社TRAPOLメンバーの力を借りて、参加したくなる組合員研修の企画を考えようということになったのです」(加藤巧治さん/関西電力労働組合 本店地区本部委員長)
関西電力の社内から生まれた「旅行会社TRAPOL」? それは一体、どんな会社なのでしょうか。
ローカルフレンドが自然とできる旅を提供
TRAPOL合同会社は、関電社員である森脇健吾さんが、社内起業制度を使って2019年に創業した旅行会社です。関電社員2名に加え、TRAPOLで採用した多様なメンバーと共に「全人類をゴキゲンにする」ことに情熱を燃やし、他の旅行会社では提供できないような、参加者が楽しく元気になる旅行をプロデュースしています。
「キーワードの一つが“ローカルフレンド”。ガイドブックに掲載されている観光名所をサラッとなぞるような旅ではなく、地域に友達がいることで、もう一層深く地域に入り込み、現地の人しか知らない魅力や穴場、場合によっては地域の課題を知る旅ができます。そんなローカルフレンドを自然につくることができ、旅が終わった後も現地の人との関係が続いていくような、面白くてフレンドリーな旅行を提供するのがTRAPOLの特徴です」(勢戸正樹さん/TRAPOL合同会社・関西電力送配電所属)
また、TRAPOLさんは地域の課題を地域の人と一緒に解決するコンサルティング事業も行っています。例えば「金比羅さん」でおなじみの香川県の琴平町では、地域の人と一緒に観光客を増やすためのアイデアを考えると同時に、観光客が増えた際に地域に発生しうる問題(ゴミの増加など)の解決策についても議論。地域にも旅人にも良い持続可能なツーリズムを大事にしているそうです。
そんなTRAPOLさんが、関西電力労働組合さんからの相談を受け、ユニオンルーキーズセミナー3の候補地として強く推してくれたのが京丹後でした。TRAPOL副代表の廣瀬さんが別のサウナ旅の企画で京丹後を訪れた際に非常に気に入り、その評判を聞いた勢戸さんが下見に来て「こんなに面白い地域があるのか!」と感動。ご自身の地元である淡路島を含む複数の候補地の中から京丹後をイチオシしてくださり、今回の組合員研修が実現しました。
HOW京丹後?|2つの共創、同期同士のつながりと地域とのつながりを両方深めるプログラムを工夫
ユニオンンルーキーズセミナー3のプランニングは、TRAPOLさんと関西電力労働組合さんから丹後リビングラボがご依頼を受け、三者で密に話し合いながら進めました。参加者が約60名と大人数であることもあり、特に最初のアイスブレイクが肝要。そこでメンバー間に熱量が生まれないと、その後の行動も遠慮がちになり、面白みを感じにくい旅になってしまう恐れがあります。
そこで今回は最初のプログラムを「ドラゴンカヌーで高級食材を奪い合うレース」に設定! チーム対抗、初めてのドラゴンカヌーを必死で漕ぎながらの争奪戦は、日頃の理性も吹き飛ばし、いやがおうにもメンバーの結束を強め、体も心もヒートアップさせます。
これを経て十分にメンバーが温まった状態で、その後は興味関心ごとに体験を選び、地元の人々と触れ合いながら食材を調達するプログラム。その食材を持ち寄り、夜は焚き火を囲んでBBQを行いました。このような日常とは違うローカルフィールドでの体験を通じて、チームビルディングや同期同士の関係構築も促していきました。
「今回の組合員研修で大事にしたのは、地域とのつながりと、組合員(社員)同士のつながりです。社員同士が仲良くなることも重要なのですが、地域の課題や面白さは、やはり地域にいる人しか伝えられない。今回の旅で社員同士が仲良くなり、京丹後の人とご縁ができて、“また今度、同期で京丹後に遊びに行きたいね”となったら、きっと三方良し以上のものがありますよね」とTRAPOLの勢戸さん。
プログラムの全体像を以下にご紹介します。
【関西電力労働組合共創ツアー 1泊2日スケジュール概要】
*大阪より貸切バスにて京丹後入り
研修テーマ「BEYOND 境界をこえる」
仲の良い同期とあまり接点のない同期。同じ部署の同僚と他部署の同僚。社内の人と社外の人。入社してから月日が経つと、いつしかそんな境界ができています。一方で、自分が所属するコミュニティの外にも、素敵なモノやヒトがあふれています。日常の境界を越えて、そんな“素敵”を見つけてもらうために、どこにもない研修として今回の企画が生まれました。
その境界を越えるための旅先として選ばれたローカルフィールドが京丹後。そしてその関係をつなぐコーディネーターを、丹後リビングラボが務めました。
●1日目
・12:00 京丹後到着
・Main Experience 〜同期同士の絆を深める体験〜
チーム対抗!ドラゴンカヌーで高級食材を奪い合え!
・えらんで体験〜地域に根付いた“食”に触れる体験
– オーガニック農園で野菜収穫体験
– 地元の米を食べ比べ&米農家直伝本気の米炊き体験
– 久美浜湾クルーズ&地域ブランド久美浜産牡蠣の調理体験
– 琴引きの塩づくり体験
– かぶと山公園でのんびり釣り体験
・食材を持ち寄ってBBQ
・宿泊施設へ
●2日目
・みんなで体験〜地域コミュニティとのつながりを深め、暮らしを学ぶ体験〜
– みんなで早朝ヨガ(丹後ブルーの海を望みながら地元講師によるヨガ体験)
– みんなでビーチクリーン(活動に取り組む地域団体との交流)
– 地元の食文化の継承に取り組む団体 丹後わくわくスポット「きらめき」とご当地グルメの調理体験(丹後バラ寿司づくり体験)
・研修終了、帰路へ
「交流を通じて視野が広がった」組合員研修後の声
盛りだくさんの1泊2日、特に1日目夜のBBQでは、京丹後在住の関電OBの方が地酒を手土産に参加してくださり、「最近の若者はお酒を飲まない」の通説を覆すほど楽しく盛り上がりました。
研修後の組合員アンケートではこんな声が。
・[全体を通して]ふだんは関われない人と関わり、プライベートの旅行ではできない地元密着型の体験に多数参加でき、視野が広がった。
・[全体を通して]なかなか話す機会のない同期や地元の人との交流と、素敵な体験がたくさんできて2日間で京丹後を堪能することができた。
・[ドラゴンカヌー]旅の序盤に班全員で目標に向かうことで仲良くなれる企画があって良かった。景品が豪華だったからこそみんな団結して頑張ったと思う。
・[選択型体験・オーガニック野菜収穫]農家の方の、農業を始めた経緯、土や野菜に対する思いが伝わり、とても興味深かった
・[選択型体験・米づくり]自分より若い子が地元を盛り上げようと活動していてすごく応援したくなった
・[ビーチクリーン]海洋ゴミの現状を実感を持って感じ、ビーチクリーンへの思いを知ることができた
・[バラ寿司づくり]地域の郷土料理をつくるというふだんの旅行ではできない体験ができた。美味しいごはんをいただきながら、おばあちゃんたちとの触れ合いができた
・[再訪意向]また訪問したい。何年か経ったら懐かしい気持ちになって、家族や友達とまた行きたいと思うと思う
・[再訪意向]ぜひまた訪問したい。京丹後はただの田舎ではなく、未来を見据えてさまざまな活動している人がいて、地元の人もそれに協力的な雰囲気がある所がとても素敵だと思ったから
・[この研修を後輩に薦めるか]薦める。同期の輪が広がり、ふだん自分ではできないような地域密着のアクティビティが体験でき、有意義な時間になるから
そして、この組合員研修の最初の課題だった「参加者の減少傾向」に対しては、今回の参加者アンケート回答者のうち約94%の組合員が「この研修を後輩に薦めたい」との意向を強く持っていることが明らかになり、次年度以降の参加者の増加に期待が持てる結果となりました。
自分の生き方・働き方を見つめる機会に
今回の「ユニオンルーキーズセミナー3 in京丹後」を終えての感想を、関西電力労働組合の加藤さん(委員長)と米田さん(副委員長)に伺いました。
「最初は固かったメンバーも体験を通して打ち解けてくると、“パワーがあるな!”と感じました。京丹後で働いている皆さんは自立的な方が多く、日本のサラリーマンは疲れている人が多く見受けられる中で、この研修でいろんな価値観や目線に触れ、若い子たちが“自分に本当に合った生き方って何だろう?”と考えるきっかけになればうれしいです」(加藤さん)
「当初から“人生の充実”みたいな所に気づきを得られる研修にしたいと考えていて、それを我々だけで実現するのは難しかったのを、TRAPOLや丹後リビングラボさんのおかげで実現でき、期待を上回ってみんながイキイキしていました。京丹後の魅力としては、やはり“人”の魅力が最も強く印象に残りました」(米田さん)
また、TRAPOLの勢戸さんからは、少し角度を変えたこんなお話が。
「実はこの組合員研修の裏タイトルは、“働き方改革”でもあったんです。僕は関西電力送配電とTRAPOLの兼業社員ですし、今回同行したカメラマンも写真の活動を兼業で行っています。サラリーマンであっても働き方はたくさんあって、この会社に属しながらも自分次第で自由に働けることを伝えたかった」
一つの組織、一つの地域、同じ日常に居続けることで、いつの間にか世界や生き方はそれだけだと思い込んでしまう。京丹後での多様な人との出会いや体験が、そんな自分自身の思い込みに気づき、自分の枠をBEYOND=超えていくための機会になるといいですね。
WHAT京丹後?|今後の共創の可能性
京丹後への再訪意向が非常に高かった今回のルーキーの皆さん。仲良くなった同期や家族と一緒にまた京丹後に足を運んでくださることも次なる共創ですし、さらには彼らが今後社内で成長していった時、京丹後のプレイヤーとのつながりを活かし、何か事業が生まれる可能性もあります。
また、関西電力労働組合さん・TRAPOLさんとは今後も、2年目社員だけでなく他の社員や違う管轄地区の社員を対象に、こうした地域と深くつながる要素を取り入れた研修機会を企画する他、関西電力労働組合の森林保全活動「関労の森」の取り組みを京丹後でも行う可能性についても話し合っていく予定です。高齢化で山林の保全が難しくなっている京丹後に関電社員の皆さまが力を貸してくださり、引き換えに美しい自然の中でのリフレッシュや豊かな食文化を楽しんでいただけるような取り組みができたらと丹後リビングラボでは考えています。
関西電力労働組合さん、TRAPOLさん、これからもよろしくお願いいたします!
【ユニオンルーキーズセミナーⅢ in 京丹後】地域コミュニティに触れ、サスティナブルな暮らしを学ぶ(動画)
Writer & Editor|森田 マイコ企業でのマーケティングや広報の経験を生かした、人を動かす記事づくりが信条。多くの地域や分野を横断しながら、社会がどこに向かっていくのか探究中。趣味は旅。