【NTTドコモ×レッドハリケーンズ大阪×京丹後】ラグビー選手と地域住民が一緒に海ゴミ問題に取り組む機会を共創!

– 丹後ビジネスコラボ Case 06 –

丹後リビングラボが市内の事業者やプレイヤー、行政等と協働してテレワーク・ワーケーションプログラムを展開することで生まれた、「市外事業者×京丹後」の共創事例をご紹介する記事シリーズ。第6回は株式会社NTTドコモさんと、そのラグビーチームであるレッドハリケーンズ大阪さんと共に三者で共創した、「ラグビー選手とNTTドコモ社員、京丹後住民が一緒に海ゴミ問題に取り組むイベント」の事例です。

ビーチクリーンには地域住民も多数参加。京丹後在住のNTTドコモOBも駆けつけた

WHY京丹後?|地域の課題を自分事に。脱炭素社会へ向けて住民と共にできることを

2024年6月、京丹後の八丁浜のビーチに集結したのは、赤いTシャツに身を包んだレッドハリケーンズ大阪の5人の逞しいラグビー選手と、その母体であるNTTドコモの社員でカーボンニュートラルを目指す活動に積極的に取り組んでいる「カボニューアンバサダー」の方々、そして地域住民からなる総勢約40名。丹後エクスペリエンスの八隅さん指揮の下、みんなでビーチクリーンを行いました。春の京丹後の海は少しエメラルドグリーンがかって白い砂浜に映え、その美しさは世界屈指のリゾートにも負けないほど。だからこそ漂着するプラスチックやペットボトルなどのゴミを少しでもきれいに片付けたい。参加者は思いを一つにして取り組み、この日は45Lのゴミ袋で約20袋分もの海ゴミを集め、ラグビーのパスさながらのバケツリレー方式で回収トラックへと積み込みました。

みんなで集めた海ゴミやビーチクリーンの道具をラグビーのパスのようにバケツリレー

地球に良いことを社員一人ひとりから広げていく

携帯電話やdポイントでおなじみのNTTドコモさんは、日本有数の通信事業者です。今回のビーチクリーン・イベントは、NTTドコモのサステナビリティ推進部と、同部に所属する組織となっているラグビーチーム「レッドハリケーンズ大阪」のメンバーとが協働して開催。丹後リビングラボはプログラム企画や現地コーディネートをご一緒させていただきました。

通信事業はたくさんの電力を使います。その環境負荷を低減していくため、NTTドコモさんでは脱炭素社会と生物多様性の回復を目指した取り組みに力を注いでいます。また、通信事業は人と人、人と社会をつなぐ事業でもあることから、「環境・人・社会への貢献」をサステナビリティ活動の柱に据え、特に森林の保全や、働き方改革、資源リサイクル、地域の清掃活動などに取り組んでいます。

大阪府にあるドコモ泉南堀河(ほりご)の森は、環境省「自然共生サイト」にも認定されている。そこに生息するオオムラサキやニホンヒキガエルなどの希少な生き物や生態系を守る活動を実施(写真提供:NTTドコモ)

こうした企業としての取り組みと並行して、社員一人ひとりのサステナビリティ意識を高め、環境活動に自分事として取り組む機運をつくろうと始まったのが「カボニューアンバサダー」制度。アンバサダーに就任した社員は日頃の業務の傍らで、地球に良いことを自分自身で考え広めていく活動を積極的に行っています。こうした日頃の活動が土台となって、本業の事業に対する良いアイデアや影響がもたらされる可能性もあります。今回の京丹後のビーチクリーンに参加したのも、このカボニューアンバサダーの有志のみなさんです。

環境活動の切り口をさらに広げるため、サステナビリティ推進部では同じ部内に属するレッドハリケーンズ大阪とコラボレーションした活動も始めました。「レッハリバスターズ」と称し、カボニューアンバサダーとレッドハリケーンズ大阪の選手が合同でホストスタジアム周辺の清掃や、なにわ淀川花火大会の後の清掃などを実施。「ラグビー」を入り口として、人々に環境活動にも興味を持ってもらえるきっかけづくりを工夫しています。

2023年8月には、カボニューアンバサダーとレッドハリケーンズ大阪の選手が合同でなにわ淀川花火大会の翌日に清掃活動を実施(写真提供:レッドハリケーンズ大阪)

ラグビー選手自ら地域課題の解決に貢献する活動を

一方のレッドハリケーンズ大阪は1993年の創部以来、大阪市をホストエリアとして活動し、現在は『ジャパンラグビー リーグワン』で活躍しているプロの社会人ラグビーチームです。数あるラグビーチームの中でも社会貢献活動に力を入れており、長期療養が必要な子どもたちの支援団体 Being ALIVE Japanと連携して、チーム内に長期療養児を迎え入れる取り組みや、dポイントによる寄付制度の構築などを行っています。

2023年度には大阪市17区と連携協定を締結し、各区に選手がアンバサダーとして就任。区が抱える地域課題を一緒に解決していく活動もスタートしました。その活動量は1年間で約270件にも達し、平日はほぼ毎日と言ってもいいほど、大阪市内のどこかの区で、レッドハリケーンズ大阪の選手の誰かが地域貢献活動を行っていることになります。

地域活動に人一倍取り組んでいるレッドハリケーンズ大阪の安田選手。背番号8を付けた安田選手のNo.8のポジションは、後方でチームの下支えをする、目立ちにくいけれど重要な役割(写真提供:レッドハリケーンズ大阪)

中でも群を抜いて活動量が多いのが、今回の京丹後のビーチクリーンにも中心メンバーとして参加した安田選手です。安田選手は住之江区のアンバサダーを務めており、地域の障害者施設の方と一緒に、横断歩道での見守り活動とあいさつ活動に取り組んでいます。

「住之江区には交通事故が多いという課題があります。また、地域の子どもたちがラグビー選手と触れ合う機会もなかなかないので、横断歩道を中心に、地域の人や子どもたちに対する見守りとあいさつの活動をしています。僕は今までラグビーのことばかり考えてきましたが、選手が主体となって行うこの活動をきっかけに、それではダメだと気がつきました。地域の人と触れ合うことで感謝の言葉や笑顔をいただき、子どもたちが喜んでいる様子を見るとやはりうれしいですし、地域の人にも僕たちをより身近な存在に感じてほしい。そして僕たちの試合を見ることで、勇気や元気、夢を持つことの素晴らしさを感じてもらえたらと思って活動しています」

と安田選手。今後はレッドハリケーンズ大阪の地域貢献活動と、サステナビリティ推進部の環境活動との相乗効果をさらに高めていこうと両者で考えているそうです。

HOW京丹後?|ビーチクリーンを入り口に海ゴミ問題を深く知り、地域住民と共に解決策を考える

こうした二つの動きが合わさり生まれた今回の京丹後でのビーチクリーン・イベントは、安田選手を含むレッドハリケーンズ大阪にとって実は二度目。2023年度に、とある企業の紹介で初めて京丹後に来ていただき、ビーチクリーンとラグビー体験を行っていただきました。その時の京丹後の印象が心に残ったことから、今回はサステナビリティ推進部と共に、より環境活動を主眼に置いたイベントとして実施に至りました。

今回はビーチクリーンだけに留まらず、参加者はその後、丹後エクスペリエンスに移動し、プラスチックを資源としてアップサイクルするオランダ生まれの仕組み「Precious Plastic※」を体験。海ゴミの実態を映像も使いながらより深く学び、みんなで明日からできることを考えるワークショップも行うという、地域と一体となった「ラーニング&ラグビー体験イベント」になりました。

※Precious Plastic(プレシャス・プラスチック):誰でも、どこでも、プラスチック廃棄物をリサイクルし、新たな製品をつくって販売する小規模ビジネスを始められる仕組みをオープンソースで無償公開しているオランダ発のプロジェクト。

【共創ビーチクリーンイベント 日帰りスケジュール概要】

*大阪よりレッドハリケーンズ大阪のバスにて、選手とカボニューアンバサダーが丹後入り 

11:00 京丹後着 

・京丹後の食材でBBQ

・ビーチクリーン

・ビーチでラグビー体験

・丹後エクスペリエンスに移動

–   海洋プラのアップサイクル「Precious Plastic」を体験

–   明日からできることを考えるワークショップ

17:00  終了、帰路へ

トン’s キッチンさんにて京丹後の野菜や京丹波高原豚のBBQをみんなで満喫(写真提供:NTTドコモ)

廃棄されビーチに深く埋まってしまったロープをみんなで引っ張り出す場面も

グラウンドに比べて幅の狭いビーチでのラグビー体験は選手と参加者の距離が近く、より一層の一体感が

海ゴミには塩分があるため焼却できずに埋め立てられている。八隅さんが考える解決策は、ビーチクリーンを憧れの職業にすることと、新たな処分方法を生み出すこと。Precious Plasticだけでは海ゴミ全ての解決には及ばないそう(写真提供:NTTドコモ)

京丹後での共創イベントを経て

海ゴミ問題の解決アイデアを考えるワークショップでは、省エネ電力に変える、マイボトルを徹底する、ゴミを減らすためにフードロスを防ぐなどの意見が出ました。中には「ゴミを減らす・分別するだけでなく、どうやったらゴミがアップサイクルにつながるのか、次につながっていくことを考えたい」と発言した社員さんも。一人ひとりの努力だけでなく、社会の仕組みとして何とかできないか。企業人としてそのような問題意識が芽生えたのかもしれません。

今回のイベントを実施した感想をサステナビリティ推進部の方に伺うと、

「海ゴミの問題はニュースなどで知ってはいましたが、やはり現地でリアルに見て、現地の人からお話を聞くことで熱が伝わり、京丹後を訪れた大きな意味があると感じました。八隅さんはふだんからこの活動に真剣に取り組んでいて、その背後にある“未来の子どもたちが安心して裸足でビーチを走り回ってほしい”という思いを分かりやすい言葉で語ってくださったので、私たちに言われているんだ、私たちにもできることがあるんじゃないかと自分事として考えることができたと思います」とコメント。

京丹後でのビーチクリーン参加が二度目となる安田選手は、

「八隅さんのことを“やっさん”と呼べるくらいの関係になり、去年に続いて行かせていただきましたが、活動がレベルアップしているのを感じました。環境保全や未来の子どもたちに対する彼の本気が伝わってきます。僕以外の選手も、現地で海ゴミ問題の切実さをひしひしと感じている様子でした。今日からできることを自分だけがやるのではなく、ラグビー選手という特別な立場を生かし、周りのチームメイトや職場の人、自分が接する地域の人やファンのみなさんにも良い影響を与えられたらと思います」と語りました。

レッドハリケーンズ大阪やNTTドコモのみなさんが日頃から取り組んでいる「地域のフィールドに出て、地域の人と同じ場所に立って課題に取り組む」活動は、人と人、人と企業の間にある垣根を取り払い、想像以上に大きな風を巻き起こす可能性を秘めています。京丹後での共創ビーチクリーンを起点に、海の環境に心を寄せる人を増やしていく大きな風に育てていけたら良いですね。

WHAT京丹後? | 今後の共創の可能性

最後に安田選手は、京丹後の魅力についてこんなふうに語ってくださいました。

「京丹後の魅力と言えば、美しい海ももちろんですが、やはり現地の人。みなさん元気で親しみやすく、ラグビー体験でも一体感を感じることができました。丹後のことなら何時間でも語れるくらい地元を好きだと言えるのがすごい。こうした“人の魅力”が京丹後の大きな魅力だと思います」

今回の共創ビーチクリーンを経て、安田選手からは、この活動を継続し、選手の中でも参加者を増やして、さらに良い活動にしていきたいと力強い言葉をいただきました。レッドハリケーンズ大阪の選手のみなさん、NTTドコモのカボニューアンバサダーのみなさんから、今回感じた京丹後の魅力や気づきを引き続き発信していただけたらうれしい限りです。また、NTTドコモさんの本業であるデータ通信技術を使い、例えば海ゴミの現状を定点観測&発信して八隅さんの活動を後押ししていただくなど、未来に向けた次なる共創が生まれる可能性にも期待しながら、丹後リビングラボもこのご縁を大切につないでいきたいと思います。

(参考リンク)

株式会社NTTドコモ

レッドハリケーンズ大阪


Writer & Editor|森田 マイコ

企業でのマーケティングや広報の経験を生かした、人を動かす記事づくりが信条。多くの地域や分野を横断しながら、社会がどこに向かっていくのか探究中。趣味は旅。

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